「今日のひだまり、めちゃくちゃうまい」――城南小学校1年生と、枝豆をもいだ日

2026.07.10

「今日のひだまり、めちゃくちゃうまい」――城南小学校1年生と、枝豆をもいだ日

「今日のひだまり、めちゃくちゃうまい!」

給食の時間、隣の席の男の子がそう言いました。

——枝豆、じゃないんだ。

私はスプーンを持つ手を止めて、しばらくその言葉を噛みしめていました。

朝どれの枝豆を、教室へ

2026年7月9日。さいたま市の城南小学校で、1年生およそ40名と枝豆のもぎ取り体験をしました。

城南小での実施は、昨年に続いて2年目です。その前日にも金子さんと枝豆のもぎ取り体験を行っています。

今回も、農家の金子さんに朝どれの枝豆を持ってきてもらって、株ごと学校に持ち込んでの実施です。抜いたばかりの株が、枝も葉もついたまま教室に運び込まれる。あの瞬間の、子どもたちのざわめきがいい。教室が、少しだけ畑になる時間です。

城南小の1年生は1クラスだけ。つまり、40人で株を全部さばくことになります。

これが、なかなかの量でした。

作業が進むにつれて、あちこちから「疲れた……」の声が上がりはじめます。1人1株しかできない学校もある中、たくさんの枝豆に触れてもらえてよかったと思いました。楽しいイベントでもある反面、労働者の顔になっているこどももいました笑

ただ、その「疲れた」があとで効いてきます。

もぎ方に、その子が出る

作業を眺めていて、面白いなと思ったことがあります。

みんな、最初はすごく慎重なんです。枝から豆をひとつ外すのに、おそるおそる手を伸ばす。力を入れていいのか、どこを持てばいいのか、わからない。だから全然進まない。

ところが1個やってみると、そこからが分かれ道でした。

コツをつかんで、どんどんスピードが上がっていく子がいる。無心になって、手が止まらない。かと思えば、1個1個ていねいに、虫がいないかを確認しながら進めていく子もいる。ひとつ外すたびに、じっと豆を見ている。

速さを求める子、確かさを求める子。急ぐ子、味わう子。

同じ株に対して、同じ作業をしているだけです。それなのに、その子その子の「自分のやりたいやり方」と「自分の速さ」が、はっきり表れる。

どちらが正しいわけでもない。40通りのやり方が、そのまま40人分の個性として、そこにありました。

そしてこの日、金子さんが子どもたちに話してくれたことがありました。

「今日の枝豆はね、『ひだまり』っていう品種なんだよ」

「枝豆」じゃなくて「ひだまり」

もいだ枝豆は、その日の給食に出してもらいました。先生が塩ゆでにしてくれたものです。私もお邪魔して、子どもたちと同じ給食を食べました。

これが、本当においしかった。

湯気と一緒に立ちのぼる、あの青い香り。朝どれをその日のうちに茹でると、こうなるのか。農家である自分のほうが驚かされました。枝豆は鮮度が落ちるのが早い作物です。朝もいで、その日の昼に食べる——本来なら、なかなかできないことです。

そして冒頭の一言です。

「今日のひだまり、めちゃくちゃうまい!」

その子は「枝豆」と言わなかった。金子さんが教えてくれた品種の名前で、その豆を呼んだのです。

私は、しばらく声が出ませんでした。

スーパーの棚に並んでいる袋には、たいてい「枝豆」としか書かれていません。誰がつくったのか、どんな品種なのか、いつもがれたのか。そのほとんどは、消費者に届く前にそぎ落とされていきます。

でも、自分の手でもいで、育てた人から名前を教わって、その日のうちに食べる。そこまで来ると、もう「枝豆」という一般名詞ではなくなるんですね。「ひだまり」という、顔のある食べものになる。

私たちが「顔の見える食」と言うとき、たぶんこれが、その一番わかりやすいかたちなんだと思います。

「おかわりしたい人!!」と聞いたら、すごい勢いで手が挙がりました。

あんなに「疲れた……」と言っていた子たちが、です。たくさん食べてくれました。

食べてくれて、ありがとう。

質問の手は、いつから挙がらなくなるのか

もうひとつ、忘れられないことがあります。

小学生に「何か質問がある人?」と聞くと、とにかくたくさん手が挙がるんです。次から次へと出てくる。中には質問なのか感想なのかわからないものもあるけれど、とにかく、聞きたいことがあふれている。

でも、大人はどうでしょうか。

講演やセミナーで「ご質問のある方は」と言われて、手を挙げる人はほとんどいませんよね。会場がしんとする、あの空気。私自身、挙げられないほうの人間です。前職で東京の会社にいたころから、ずっとそうでした。

これって、いつから、こうなってしまうんでしょうか。

不思議で仕方ありません。

そして、こうも思うのです。質問が出るということは、大人の話を真剣に聞いていた、ということでもある。あの手の挙がり方は、40人が金子さんの話をちゃんと聞いていた証拠なんだ、と。

子どもと接していると、どうしても「できないこと」のほうが目についてしまいます。作業が遅い、話を聞かない、こぼす、ふざける。大人の側は、つい注意する側に回ってしまう。

でも、こういうふとした一面にこそ、私たち大人が気づいてあげなきゃいけない。

聞きたいと思う素直さ。知らないことを、知らないと言える強さ。この気持ちを、子どもたちにはずっと持ち続けてほしい。そして——私たち大人も、取り戻さなきゃいけないものだと思います。

子どもから学ぶ姿勢を持つこと。この日、いちばん深く理解できたのは、たぶんそこでした。

もぎ取り体験は、こちらが教えに行っている——そう思っていました。実際は、教わって帰ってきているのだと思います。

「疲れた」の先にあるもの

農BASEは、さいたま市内160校のうち40校に、地元の野菜を届けています。地産地消の比率を、25%から50%へ。それが当面の目標です。

数字で言えば、あと少し。実務で言えば、まだまだ遠い道のりです。

私は江戸時代から続く農家の11代目でありながら、いちど東京でサラリーマンをしてから、この世界に戻ってきました。だから、農家の気持ちも、外から農業を見る目も、両方いくらかはわかるつもりでいます。

農家の気持ちは、農家だからわかる。

だから私たちは、金子さんのような生産者と学校をつなぐ仕事をしています。野菜を運ぶだけではなく、朝どれの株ごと、教室まで運ぶ。おたがいさまで成り立っている地域の食を、子どもたちの目に見えるかたちにする。

でも、数字を追いかけているだけでは届かないものが、あの教室にはありました。

40人で1クラス分の株をさばく「疲れた……」があったからこそ、「めちゃくちゃうまい」があった。金子さんが品種の名前を教えてくれたからこそ、それは「ひだまり」になった。

手を動かした分だけ、味が変わる。名前を知った分だけ、食べものが近くなる。

子どもたちの「おいしい」が、地域をつなぐ。

昨年に続いて、今年もその現場に立ち会わせてもらいました。金子さん、城南小学校の先生方、ありがとうございました。

来年もまた、朝どれを教室へ運びます。


よくあるご質問

もぎ取り体験でとれた枝豆は、その日の給食に出せるのですか?

城南小学校では、子どもたちがもいだ枝豆を先生が塩ゆでにしてくださり、その日の給食に出していただきました。朝どれの枝豆をその日のうちに調理するため、香りが格段に良いのが特徴です。

枝豆の「ひだまり」とはどんな品種ですか?

2026年7月9日の城南小学校でのもぎ取り体験で使用した枝豆の品種名です。当日、農家の金子さんから子どもたちに直接ご紹介いただきました。品種名を知って食べることで、子どもたちが「枝豆」ではなく「ひだまり」と呼ぶようになったのが印象的でした。

ご賛同・協力頂いている「さいたま市の農家様」

  • 鈴木屋

  • 金子農園

  • 森田農園

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  • 鈴木農園